大判例

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東京地方裁判所 昭和42年(むのイ)281号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕取寄せにかかる一件記録によれば、申立人に対する道路交通法違反被告事件は、昭和四一年八月八日T簡易裁判所に起訴されたが、同裁判所裁判官甲の指定した第一回公判期日(同年一一月八日)、第二回公判期日(同四二年一月一三日)はいずれも被告人不出頭の為延期となつたこと、第三回公判期日(同年二月一〇日)に至り始めて申立人は出頭し被告人席についたが、右裁判官の人定質問に対し黙秘し、その説得にも応じないので、同裁判官は、検察官提出にかかる司法警察員作成の「被疑者写真」と題する書面添付の写真と、被告人席にいる者とを対照した結果、申立人が本件被告人であると認め、被告人黙秘のまま冒頭手続を経たうえ、検察官請求にかかるT他四名の証人尋問について採用の証拠決定をなしたところ、右処置を不服とした申立人が右裁判官の在廷命令を無視して退廷した為、次回続行となつたこと、第四回公判期日(同年五月一〇日)において、申立人はYを特別弁護人に選任ありたき旨許可の申請したので、右裁判官はこれを許可したうえ、証拠調をしようとしたところ、申立人より、未だ被告人の人定質問すら済んでいない旨の異議申立がなされたので、同裁判官は、既に前回公判期日において人定質問はもちろん冒頭手続も終了しているから証人調をする旨告げたが、申立人はなおも右異議を繰返して審理の進行を妨げるので、同裁判官は申立人自身につき、その氏名、本籍、住居、職業、年令等を確めまた公訴事実を説明したうえ、証人等の人定質問をしようとしたところ、被告人および特別弁護人が、検察官の起訴状朗読を求めるので、重ねて、右手続は終了している旨告げたが、特別弁護人がなおもそれは検察官の独り言に過ぎぬなぞと述べ審理を混乱させるので、右特別弁護人が、法律的知識に乏しく、適切な弁護活動をする能力に欠ける等の理由で、さきにしたその選任許可を取消したうえ、前記五名の証人の宣誓手続を了し、証人Tの尋問を開始しようとしたところ、申立人より裁判官忌避の申立がなされたので、これに対し、同裁判官は、右忌避の申立が訴訟を遅延させる目的のみでなされたことが明らかであるとして、これを却下する旨の裁判をしたことがそれぞれ認められ、右各事実に徴すれば、本件裁判官甲は、適法に被告人の人定質問および冒頭手続を了したうえ、検察官申請の証人の尋問を開始しようとしていたものであつて、論旨第二点主張のように、右被告人の人定質問および冒頭手続を経ずして、まつこうから証人調を強行したものではないことが明らかであり、また、論旨第一、第三点主張のように、黙秘権の保障をないがしろにして申立人の有罪を予断し、または憎悪感情をもつて審理を進めたと認められる何らの形跡がないばかりでなく、むしろかえつて、同裁判官は、前記認定のように、申立人自身につき、その氏名、本籍等を確かめたり、公訴事実の説明をしたりして、申立人の理由の無い異議申立や言い分にも充分耳を傾け、説得によつて円滑な訴訟の進行に努力していることが明らかである。したがつて、同裁判官には、所論のような不公平な裁判をするおそれがあるとはいえないというべきであるから、申立人の本件忌避申立に対し、同裁判官が訴訟遅延のみを目的としたことが明らかであるとして簡易却下した原裁判は結局相当であり、その他記録を検討しても、同裁判官に不公平な裁判をするおそれがあると認めるに足る事由を発見できない。されば本件準抗告は理由がないものというべきである。(清水春三 近藤繁雄 中込秀樹)

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